ポッドキャストを1年以上続けて得られた知見を公開するよ

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ポッドキャスト 雑記 iZotope

はじめに

どうも、Yarukinai.fmからやってまいりました須貝です。
この記事はLivesenseアドベントカレンダーの4日目です。ここでは業務とは関係ない話をします。

私は友人たちと昨年6月からポッドキャストをやっておりまして(私はホストではなくてレギュラー出演くらいのポジション)ありがたいことに徐々にリスナーの方も増えているようで、やってみるもんだなと思いましたね。内容は一応「テック系」とうたってはいるのですが、だいたい健康とお金とコンビニについて話していることが多いです。

で、今まで私の役割といえば毎回適当に話をして終わりで編集やらなんやらは全部ホストのマークさんに任せっきりでおりました。毎回おまかせで申し訳ないのと、コロナの影響で時間も少しあるので自分でも収録した音声の編集をやってみたいなと思ってep. 37から編集デビューしました。

これでひととおり企画(あってないようなものだが)、収録、編集、公開まで経験することができたので私が学習したことをみなさんにお伝えしたいと思います。

やることはだいたい4つ

ポッドキャストを配信するといってもそんなに難しいことはなく、やることは以下の4つです。

    1. 話す内容を考える
    1. 収録する
    1. 編集する
    1. 公開する

最近はstand.fmのような便利なサービスもあるので機材や編集用ソフトを買わずともスマホ1台あれば録音から配信まで全部できます。「そういう簡単なやつがいいわ〜」という方はそちらのほうが絶対に良いと思います。簡単なので。

なお、私がこの記事で対象にしているのはそういう方ではなく「マネージドなサービスじゃなくて自分でやりたいんや」という素晴らしきDIY精神を持った方です。ポッドキャスト沼へようこそ。

1. 話す内容を考える

内容は自分たちが話したいことを話せば良いと思います。なお1年以上雑談系のポッドキャストを続けて強く感じているのは「適切な粒度のテーマがあったほうが圧倒的に続けやすい」ということです(当たり前)。たとえば単に「技術系のポッドキャストをやる」だと範囲が広すぎるので「AWSやGCPなどクラウドに特化した番組」「アジャイルやスクラムなどのチーム開発に特化した番組」といった設定がいいんじゃないかと思います。特に前者のようなテーマだと定点観測していればネタはどんどん出てきます。なので、「興味があるもしくはすでに知見がある」且つ「定期的にニュースがある」テーマ選びがいいと思います。

私たちの場合は話のネタの管理はTrelloで行っております。各自がネタをカードとして登録しておき、収録前にそのカードを見ながら何を話すかピックアップして収録する感じです。ちなみにネタをTrelloで管理するやり方は「ゆるふわPodcast」をやっているMKさんに教えていただきました。ありがとうございます。

2. 収録する

収録方法

続いて収録方法です。私達はいわゆる「ダブルエンダー方式」を採用しています。これは何かといいますとzoomなどのビデオ通話ソフトで会話をし、各自のローカル環境で録音。録音した音声ファイルをミックスする、というやり方です。私たちは当初は物理的にひとつの場所に集まって収録をしておりましたが、コロナ後は自宅で収録するためにこのやり方に変えました。zoom上で話した内容を誰か一人の環境でネットワーク越しに録音するという手もなくはないのですが、音質的に厳しいものがあるのでダブルエンダーのほうが良いと思います。

録音環境

ご自宅で大丈夫です。会社の会議室でも大丈夫です。スタジオを借りる必要はありません。 あまり音が反響しない環境だと良いです。

使用ソフト

録音に関してはどんなソフトでも良いと思います(すいません、以後、Mac前提で話を進めます)。私はAudacityを使っています。QuickTimeはたまにファイル破損が発生するので使っていません。

使用機材

以下は私たちが使っている機材の一例です。あんまりお金をかけたくないなあという方は最初はUSB接続のマイクで良いと思います。ガジェット好きな方であれば積極的に投資していきましょう。

以下、私たちの使用している機材の一例です。

  • オーディオインターフェイス
    • audient evo4(須貝)
  • マイク
    • SENNHEISER e935(須貝)
    • SHURE SM58(マークさん)
    • SHURE PGA27(するがさん)
  • ヘッドフォン
    • AKG K240 Studio
  • その他
    • マイクスタンド
    • ポップガード
    • ウィンドスクリーン
    • 吸音材

オーディオ・インターフェースはMOTUのM2, M4あたりの評判が非常に良いです。が、ずーっと品薄の状態が続いています。仕方ないので私はaudientのevo4にしました。シンプルなデザインと、中央のノブが回しやすいので使いやすいです。あとスマートゲインという機能があって、私みたいな素人でも簡単な操作でちょうどいいゲインに調整してくれる(リアルタイムに調整するわけではなく最初の設定をしてくれるだけですが)のが非常に良いです。ちなみにゲインの調整はめちゃくちゃ重要で上げすぎるとクリッピングノイズ(音割れ)が発生してしまい、後から直すのが非常に困難です。

マイクは4本くらい試したのですが、まず音割れしない程度に声を大にしてお伝えしたいのは「ダイナミックマイクを使え」ということです。コンデンサーマイクのほうが感度が高いので細かい音を拾ってくれる=音質が良くなる、というわけでもなく、自宅だと反響音を拾ってしまったり、余計なノイズを拾ってしまったり難易度が高いです。おそらくちゃんとした環境で正しくセッティングしたら威力を発揮するのだと思うのですが、素人には難しいと思います。私には難しかった。あとダイナミックマイクに比べて作りが繊細なのでそのへんの取り扱いも難易度の高さに拍車をかけます。

ダイナミックマイクもいろんな選択肢があるのですけど、だいたいSHUREのSM58SENNHEISERのe935が定番なんじゃないかと思います。私はSM58を先に買いました。が、私の声が低めなこともあってどうもモコモコした感じになるのが気になっていました。SENNHEISERのe935にしてからはクリアに録れているなあと感じるので、自分の声質にあったマイクを探すのが良いです。ホストのマークさんはSM58で毎回安定した音質なのでやっぱり人によって違うのだなあと感じています。

その他にテーブルからの振動を抑えるためにマイクスタンドはあったほうがよいです。吹かれ音をおさえるためにポップガードもあったほうがいいと思います。

3. 編集する

正直私のやり方はだいぶ手抜きなのでその道の方からしたら「なんじゃこりゃ」という感じになっている可能性が高いです。何か体系だった知識のもとに現在の編集方法に落ち着いたわけではなく、必要最小限の工数で最大の成果(音質)を得るために試行錯誤したらこうなったという程度のものですのでご注意ください。

以下、私が使用しているソフトの一例です。

大前提としてポッドキャストはモノラルで良いです。録音段階でモノラルにしておきましょう。ステレオで収録してしまった場合はAudacityなどの無料ソフトを使ってモノラルに変換します。

まず出演者ごとの録音ファイルをAuphonic Levelerにかけて音量の調節を行います。うちの場合Target Loudnessは「-16 LUFS(Podcasts and Mobile)」に設定しています。このへんからいきなり具体的な話ですいません。

音量の調整が終わったらiZotopeのRXでノイズの除去を行います。持ってないという方はAudacityでも代用可能です。前段のAuphonic Levelerで音量を均一にする過程でノイズも増幅されているのでまずはそれをきれいにします。「Spectral De-noise」でまず無音部分(ホワイトノイズだけの箇所)を選択したら「Learn」でノイズのパターンを学習させてRenderで適用します。ここでは楽をするために一度Learnしたらまとめて全体にノイズ除去をかけています。これでも十分だと思います。

あとは発話するときのぺちゃぺちゃした音を削除するために同じくiZotope RXの「Mouth De-click」を状況に応じて使っています。これはAudacityではちょっと難しいかもしれません。丁寧にやるならちょっとずつかけるのが良いと思うのですが、私の場合は雑にまとめてノイズ除去をかけています。まあこれで十分です。

続いてミックスです。私はAudacityでやっています。このへんはお好みのDAW(編集ソフト)でやれば良いと思います。まず各者の録音ファイルの先頭を揃え、余計な部分(相槌や発話が重複している箇所)を削除して聞きやすくします。終わったら各トラックをひとつの音声ファイルにまとめて、無音部分の除去をし、先頭と最後の余分な箇所を削除します。

その後、Yarukinai.fmの場合はオープニング曲があるのでガレージバンドを使ってオープニング曲を追加します。これを音声ファイルに書き出します(うちの場合はwav)

うちではwavをmp3に変換するのにlameを使っています。コマンドとしては下記のような感じです。ポッドキャストであればビットレートは64kbpsで十分だと思います。

$ lame -m m --resample 44.1 -b 64 --noreplaygain yarukinai-67-2020_11_30.wav yarukinai-67-2020_11_30.mp3

これで音声ファイルの作成は完了です。

チャプターをつけておいたほうが便利だなと思って一時期挑戦してみたのですがめんどくさかったので継続のしやすさを優先してやめました。

4. 公開する

最後に公開です。

正直これもいろいろなやり方があるので正解はありません。私たちの場合はGitHub Pagesを使って公開しています。テンプレートとして yattecastを使っています。

メリットはGitHubに慣れている私たちからすれば楽だということですね。サーバーの運用とかもないですし。

反面、このやり方のデメリットは音声ファイルもGitHub Pagesにホスティングしているため容量制限があることや、自分でApplePodcastやSpotifyなどに登録することになるのでメトリクス(どのくらい聞かれているかなどの数字)が把握しにくい などです。特にまじめに数字を追っていきたい人には後者が致命的なデメリットになるかもしれません。

そのへんを解決できそうなのが Anchorで、まだ試したことはないのですが各種ポッドキャストサービスにまとめて登録し、数字もまとめて把握できるそうなのでいまから始めるなら有力な選択肢のひとつだと考えています。

おまけ(収益化)

僕らYarukinai.fmという名前のわりには独自ドメインをとったりしてお金かかってるんですよね。年間18000円くらい?だと思います。これはホストが自腹で払っています。ポッドキャストはそこそこ本気でやろうとするとお金がかかるのでできればすこしでも収益化できるとうれしいです。私たちの場合はnoteのサークル機能を使ってYarukinai.fmファンクラブなるものを作りまして月額200円でサポートしてくれる方を募っています。私自身メンバーとしてサブスクリプションしているので月額200円払っているのですけど。日本語でやっている以上、英語圏ほどのリスナー数が見込めるとも思わないので広告などで収益化できるとも思っていないのですが、運営にかかるお金の少しでも得られたらいいなあと思っているところです。

おわりに

というわけでざっとですが私がポッドキャストをやってきた中で学んだことを書き出してみました。
ポッドキャストはこれからも盛り上がっていくと思いますし、おもしろい番組がどんどん生まれていてウォッチ(リッスン?)していて非常に楽しいです。この記事を読んでポッドキャストをやってみようかなと思う方が一人でも増えれば非常にうれしいです。